婚約破棄と慰謝料 - 細川行政書士事務所

1、婚約の成立

まず、婚約破棄の話の前に、その前提となる婚約とは何かを知らなければなりませんので、そこから始めます。

 

法律には、婚約に関する規定はありません。しかし、これまでの裁判例をもとに、婚約も1つの形態として認識されてきました。それによると、婚約とは、男女間の結婚しようという約束(婚姻契約)のことをいいます。そして、婚約は当事者間の口約束だけで成立するとされており、結納や婚約指輪を取り交わす等の特別な手続きが必要というわけではありません。

 

もちろん、親との顔合わせをしたり、結納したり、結婚指輪を買ったり、式場を予約したりすれば、婚約が成立したと判断されるでしょう。しかし、そのような明確な事実がなくとも口約束だけで成立するということです。

 

とはいえ、冗談で結婚しようと言ったような場合や、一時的な雰囲気に流されて口約束した場合にまで婚約が成立することはないのは当然で、一定の要件があります。

 

これについて、ある判例によると、「男女が誠心誠意をもって将来夫婦になるという予期の下にこの契約を為し、この契約が全くない自由な男女と一種の身分上の差異を生ずるに至ったときには、なお婚姻の予約があるとすることを妨げない。」とされています。すなわち、「男女が誠心誠意をもって将来は夫婦になろうと約束した」時に婚約が成立するものとしています。

 

別の判例では、「求婚に対し、真実夫婦として共同生活を営む意思でこれに応じて婚姻を約したうえ、長期間にわたり肉体関係を継続したものであり、当事者双方の婚姻の意思は明確であって」としています。

 

このように、婚約の成立には、「当事者の誠心誠意のある明確な婚姻への意思」が必要であるとされています。

 

その他に、婚約の成立の為の要件として公示性をあげる説もあります。すなわち、第三者から、単なる男女関係でなく、婚約している関係とみられる必要があるという事です。二人の婚約の意思が親、兄弟、友人や職場の人間に明らかになっていること等がそれに当てはまるでしょう。

 

以上からすると、明確な婚姻への意思があり、その意思が第三者から見ても分かるような状況にあった場合に婚約は成立していると判断されるのではないでしょうか。

 

そして、婚約が成立した結果として、各当事者は、お互いに相手と誠意をもって交際し、将来結婚するよう努力する義務を負うことになります。 

 

2、婚約破棄と慰謝料

婚約が成立したのもかかわらず、婚約者が約束を破り婚約を履行しなかった場合を婚約破棄といいます。では、婚約破棄(婚約不履行)された当事者は、破棄した相手に対して、損害賠償(慰謝料)を請求することができるでしょうか。

 

この点に関して、判例では、「婚姻の予約は、将来において適法な婚姻をなすべきことを目的とする契約であって、これにより当事者をして婚姻を成立させることを強制し得ないが、当事者の一方が、正当の理由なく、契約に違反して婚姻をすることを拒絶した場合には、相手方に対し婚姻予約不履行による損害賠償の責に任ずべく、その損害賠償は精神的損害の賠償すなわち慰謝料の支払を含む。」と示しています。

 

すなわち、「正当な理由」がなく婚約を破棄した場合は損害賠償(慰謝料)を請求できるとしています。

 

では、「正当な理由」とはなんでしょう。次のような場合が、「正当な理由」にあたります。

 

1.相手の不貞行為 
2.相手からの虐待・重大な侮辱 
3.相手の社会的妥当性を逸脱した行為
4.相手の婚約後の精神病・身体障害  
5.相手の失業による無収入 
6.相手のその他婚姻生活に不安をきたす行為

 

それぞれ具体的事例ごとに判断されることになりますが、以上のような理由もなく婚約を破棄した場合に、損害賠償を請求できることになります。以上のような理由があれば、損害賠償は請求されないという事です。

 

3、損害賠償(慰謝料)の根拠、範囲について

上記の通り、婚約の破棄は、一般の契約違反と同様に損害賠償の対象となります。損害賠償の法的根拠は、債務不履行(約束を破ったこと)及び不法行為(法的に悪いことをしたこと)になります。判例上は、両方を根拠として損害賠償を認めているようです。         
                                                                                                                                                                   
損害賠償の範囲は、婚約破棄に伴う物的損害と、精神的な面に対する慰謝料の請求できます。

 

すなわち、婚約破棄された方は、物的損害として、結婚式の予約のキャンセル料、新婚旅行の予約のキャンセル料、婚約指輪、新婚生活の準備の費用などを、婚約破棄した相手に請求できます。

 

なお、ここで婚約破棄で賠償責任を負う当事者とは、婚約破棄を相手に申し出た当事者とは限りません。あくまで、婚約破棄の原因となった当事者に責任があります。女性から男性に婚約の破棄を申し出たとしても、その原因が男性の浮気になれば、男性に賠償責任があります。                                                                                             
なお、婚約破棄の原因を作った相手から受け取った結納品、婚約指輪等は返還する必要はありません。この点について、当事者合意の上で婚約解消をした場合には、お互いに返還義務が生じるとされておりますので、異なるところです。

 

4、婚約破棄の損害賠償(慰謝料)額の相場は?

上記のとおり、損害賠償の対象として物的な損害と精神的な損害がありますが、物的損害は上記のとおりですが、もう一方の精神的損害はの範囲や相場はどうでしょうか。

 

この点に関して判例では、慰謝料額として高低様々に金額が示されます。慰謝料は精神的苦痛に対する賠償であり、精神的苦痛も個人差があり相対的なものですので、一概に金額を決めることは困難です。しかし、判例で出される慰謝料額として多い範囲は、50万円~200万円程度になります。