養育費に関すること - 細川行政書士事務所

養育費と生活保護 

養育費を支払う義務のある親が無職となり生活保護を受給するようになった場合、養育費を受け取る方の親は、生活保護受給者となった親に対して養育費を請求できるのかという疑問がわいてきます。

 

そもそも、親は、子に対する扶養義務がある限り養育費を支払わなければならないものであり、生活保護を受給しているからと言って養育費を支払う法的義務はなくなることはありません。しかし、養育費を支払う法的義務があったとしても、現実問題として、支払う義務のある親に支払う能力がなければ養育費を回収することは困難でしょう。

 

まず、生活保護費を差し押さえることは出来ないことになっています。生活保護法第58条には、「被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。」と規定されています。

 

この問題に関して、生活保護費が銀行口座に振り込まれると、その口座を普通預金と同様に差し押さえることが可能となるとする判決(最高裁平成10年2月10日判決)があります。つまり、預金口座に年金や生活保護費以外のお金が入っている場合、生活保護費が口座に振り込まれると、年金や生活保護費とそれ以外の財産を区別することが出来なくなってしまうので、差し押さえが可能となるとしているわけです。

 

しかし、この判決に従って、生活保護受給者である親の預金を差し押さえても、その親が、生活が苦しいので差し押さえは止めて欲しいと異議を申し立ててきた場合は、やはり、差し押さえは出来ません。それだけ、生活する上での最低限度の生活費としての生活保護費の優先順位は高いという事になります。これに関しては、子供より親自身の方が優先されるのかと忸怩たる思いもあります。これからの進展を見守ることになろうかと思います。

養育費と再婚

 養育費は、子の養育に必要な費用であり、父親と母親で負担しなければなりません。これは離婚した場合でも同様であり、親権者・監護権者を元妻とした場合には、元夫が元妻に養育費を渡す必要があります。養育費は夫婦で話し合って決めるか、家庭裁判所で決めることになります。

 

 しかし、養育費は、一回決めたら変わらないというものではなく、それぞれが再婚をした場合には、経済状況の変化により、養育費の負担程度も変わります。

 

1、元妻が再婚した場合

 

(1)元妻が別の男性と再婚した場合でも、再婚男性が元妻の子と養子縁組をしなければ、再婚男性に元妻の子を扶養する義務は発生しません。しかし、再婚したことにより,元妻は再婚相手との間で扶養関係が生じます。すなわち、元妻は、これまでは自分で稼いだ金銭だけで生活しなければなりませんでしたが、再婚男性に稼いだ給料等で扶養されることになります。


 となると、再婚男性の収入が大きい場合、結果的に、元妻に経済的な余裕が生まれるということになります。それに伴い、子の養育費の負担割合も,余裕のできた母をより多めにする、ということになります。 結果的に、元夫の養育費の負担割合が下がる、ということになります。


 具体的には,元夫からも元妻への、養育費の減額請求が可能な状態となる、ということです(民法880条)。

 

(2)元妻が別の男性と再婚した場合で、再婚男性が元妻の子と養子縁組をした場合は、子供の扶養義務者が、元夫、元妻、元妻の再婚相手の3人になるという状態になります。

 

 元妻が再婚するまでは、養育費の負担額は、扶養義務者が元夫と元妻の2名であることが前提となっていました。しかし、 扶養義務者に元妻の再婚相手が加わり3人になったので、養育費の分担方法も変化します。このような場合は、分担方法を協議によって決め直すのが合理的です。

 

 仮に協議がまとまらない場合、家庭裁判所に養育費変更の申立をすることができます。家庭裁判所で協議が整えば良いですが、整わない場合は、審判として裁判所が金額を決定することになります。この場合の算定方法に明確な基準や決まりはないのが現状です。
 
 あえて公平に考えると、『(母(元妻)と再婚相手の2人の親)の収入合計』と父(元夫)の収入から,一般的な算定式を用いて分担額を算定することになろうかと思います。

 

 しかし、実際には、親族関係からの優先順序が重視されます。この算定方法をそのまま適用するわけではありません。


 すなわち、扶養義務は養親が優先するとされ、裁判例では、優先順序として、養親が1次的、とされています。すなわち、養親は、養子縁組をして扶養義務を積極的に負担しており、通常は同居しています。そこで、元夫より優先されるわけです。

 

 もちろん、優先である養親の扶養が不十分であれば、実親の扶養義務の割合が、結果的に大きくなることになります。

 

2、元妻が再婚し出産した場合

 

 元妻が、新たに子供を持つに至った場合は、扶養義務も新たに1人分生じます。つまり、元妻の経済的負担は増えたことになります。

 

 そして、子供の養育費は、父・母のそれぞれの経済状態に応じて分配を決めることになっていますので、経済的負担が増えた方の親である、元妻は、養育費用の負担割合(負担額)を下げる、ということになります。

 

 すなわち、元妻の負担割合が下がり、元夫の負担割合が上がる、ということになります。


 この場合、元妻ら元夫に対する養育費増額請求が可能、ということになります(民法880条)。

 

3、元夫が再婚した場合

 

 元夫が再婚した場合は、元夫の経済的負担は増加することになり、養育費の減額も認められる可能性があります。いわゆる、経済的な「事情の変更」が生じたこと認められるということです。

 

 しかし、その事情の変更が、養育費の金額を定めた時点で生じていた事情、や予測された事情、であれば、変更の理由とはなりません。要するに、織り込み済みということになるのです。

 

 裁判では、元夫が再婚し、その再婚相手の子供(連れ子)と養子縁組をしたのちに元妻との養育費額を定める調停が成立した事例で、その後に元夫が提起した養育費変更の調停、審判では減額請求は認められませんでした。

 

4、元夫が再婚し、再婚相手が出産した場合

 

 元夫が再婚し、新たに子供ができた場合、扶養義務が増えた状態となります。つまり、元夫経済的な負担が増えたことになります。
そこで(従前の)子供の養育費用の負担割合を下げるべき、ということになります(民法880条)。

 

5、元夫,元妻それぞれが再婚した場合

 

 離婚後に元夫と妻の双方が別の相手と再婚した場合、当然ながら、それぞれの経済的状況は変わります。新たな配偶者との間での相互の扶養義務が生じます。 子供も、再婚相手と養子縁組した場合は、法的に扶養義務の対象となります。

 

 結果的に、元夫・元妻の経済的状況のバランスがある程度変わった、という場合は、それに伴い、養育費の金額も変わってきます。
このような事後的な事情の変更があった場合、養育費の変更が認められます(民法880条)。
 
6、過去と将来の養育費の総合的判断

 

 養育費を決めた後に、元夫・元妻の経済的状況が変化した場合は、養育費の変更が認められます(民法880条)。


 ただし、実際に養育費変更を認めるかどうか、については現在の経済的状況だけで判断されるわけではありません。過去の養育費支払履歴が参考にされることもあります。

 

7、再婚の通知義務について

 

 離婚後に再婚した場合に、相手に通知する法律上の義務はありません。ただし、離婚協議書で、再婚したら相手に伝えなければならない旨を決めておけば、相手に通知する義務は発生します。